9. おすすめの短編小説

   「プロフェッション」(SF)         アイザック・アシモフ
   「焦熱面横断」(SF)            アラン・E・ナース
   「祈り」(SF)               アルフレッド・ベスター
   「光と年月」(SF)             イタロ・カルヴィーノ
                         長編では「不在の騎士」もいいです。カルヴィーノ
                         らしいヘンな作品。
   「猿の手」(ホラー)            ウィリアム.W. ジェイコブズ
                         あまりにも有名なホラー小説の金字塔。
   「ヴァルドマアル氏の病症の真相」(ホラー) エドガー・アラン・ポオ
                         ポオの作品で一番キモチワルイ作品。
   「フェッセンデンの宇宙」(SF)       エドモンド・ハミルトン
   「橋頭堡」(SF)              クリフォード・D・シマック
                         長編では「中継ステーション」が読みやすく、わか
                         りやすく、なおかつ名作です。
   「創造の第一日」(SF)           ゲオルギー・グレーウィッチ
   「あなたに必要なもの」(SF ?)       シオドア・スタージョン
   「ゆるやかな彫刻」(SF ?)         シオドア・スタージョン(別名:時間のかかる彫刻)
   「事故」(SF)               スタニスワフ・レム
                         長編では「ソラリス」と「インヴィンシブル(砂漠
                         の惑星)」が名品。
   「ジョウント」(SFホラー)         スティーヴン・キング
                         個人的にキングの作品で一番怖い、、、
   「吹きわたる風」(SF)           チャド・オリバー
   「にせ者」(SF)              フィリップ・K・ディック
   「ボロゴーヴはミムジイ」(SF)       ヘンリイ・カットナー
   「岩の抽斗」(ホラー)           ヨナス・リー
   「たんぽぽ娘」(SF)            ロバート・F・ヤング
                         何度読んでも泣ける、日本のSFファンが大好きな作品。
   「宇宙船ポリュス号の船長」(SF)      ワレンチナ・N・ジュラヴリョーワ
                         女性作家ならではの雰囲気のある作品です。
   「手巾」                 芥川龍之介
   「ジェイソン」              桐野夏生
                         長編では「OUT」が名品。
   「顔面崩壊」               筒井康隆
   「薬菜飯店」               筒井康隆
   「名人伝」                中島敦
   「夢十夜 第六夜」 (運慶の話)        夏目漱石
   「暑さ」                 星新一
   「鍵」                  星新一
                         個人的に星作品のベスト1。
   「ひとつの装置」             星新一
   「雪の女」                星新一
   「その木戸を通って」           山本周五郎
                         白石加代子:朗読劇「百物語」の一編、いいです!
   「新婚さん」               吉本ばなな

2024年06月09日 10時23分03秒



8. スタージョン プチブーム

   「人間以上」や「夢みる宝石」などで知られるアメリカのSF作家、シオドア・スタージ
   ョン。1985年に87才で亡くなってから、アメリカで再評価の気運が盛り上がっているそ
   うです。そのきっかけとなったのが、ノース・アトランティック・ブックスという出版社
   が刊行中の「シオドア・スタージョン短編全集」全10巻。年1巻のペースで進行中で、現
   在8巻まで刊行されているそうです。しかも各短編の執筆経緯や本文校訂など、編者のポ
   ール・ウィリアムズによる詳細な解説がついているとか。

   一方、日本では、早川書房の「異色作家短編集」シリーズの1つであった「一角獣・多角
   獣」が重版されぬまま幻の作品集となり、古書店でかなりの値がつくようなありさまで、
   読みたくても読めない読者(私もその1人)を増やすばかりでした。

   しかし! 状況は変化。ここのところ、日本でもスタージョンのプチ出版ブームが、、、

   ・「きみの血を」
      ハヤカワ・ポケット・ミステリから、ようやく文庫化されました。

   ・「20世紀SF」河出文庫 (全6巻)に2作品が収録されました。
      「昨日は月曜日だった」
        「(1) 1940年代 星ねずみ」に。
      「たとえ世界を失っても」
        「(2) 1950年代 初めの終わりに」に。「一角獣・多角獣」の原書にあるもの
        の早川版では割愛された作品。

   ・「海を失った男」(日本オリジナル編集)が、晶文社から出ました。
      収録作品
      「ミュージック」
        「一角獣・多角獣」の原書にはあるものの、早川版では割愛された作品。
      「ビアンカの手」
        スタージョンの短編の中で、名高いものの1つ。
      「成熟」
      「シジジイじゃない」
        「一角獣・多角獣」早川版では「めぐりあい」という邦題の作品。
      「三の法則」
      「そして私のおそれはつのる」
      「墓読み」
      「海を失った男」

   ・「不思議のひと触れ」(日本オリジナル編集)が河出書房新社から出ました。
      収録作品
      「高額保険」
        発表された作品の第1号。
      「もうひとりのシーリア」
        「奇妙な触合い」ハヤカワSFシリーズに、「もう1人のセリア」として収録
        された作品。ハヤカワSFシリーズも幻となりつつあります。このシリーズ、
        古書店を回り43冊集めました。'95年、ガーンズバックの「ラルフ124C41+」、
        ラッセルの「超生命ヴァイトン」、キャンベルの「影が行く」が復刻され手に
        入れました。集めた中で一番のお気に入りは、ヘンリー・カットナーの短編集
        「ボロゴーヴはミムジイ」。特に表題作が実にいいです。
      「影よ、影よ、影の国」
        ソノラマ文庫海外シリーズの同じタイトルの短編集がでています。
      「裏庭の神様」
      「不思議のひと触れ」」
        「奇妙な触合い」ハヤカワSFシリーズに、「奇妙な触合い」で収録。
      「ぶわん・ばっ!」
      「タンディの物語」
      「閉所愛好症」
      「雷と薔薇」
        「雷鳴と薔薇」として、「SFマガジン・ベストNo.3」ハヤカワSFシリー
        ズ、「世界SF全集16」早川書房、「破滅の日」芳賀書店、に収録。
      「孤独の円盤」
        「一角獣・多角獣」に収録。数年前、SFマガジンの記念号に掲載され、それ
        でようやく読むことができました。

   これから予定されているのは、

   ・「スタージョンは健在なり」
      創元SF文庫から。これは今は亡き、サンリオSF文庫から出ていた短編集で、私
      の一番好きな作品「ゆるやかな彫刻」が「時間のかかる彫刻」として収録されるよ
      うです。
   ・「ヴィーナス・プラスX」
      国書刊行会から。

   の2点です。

   「シオドア・スタージョン短編全集」全10巻、日本で出るとしたら文庫になるでしょうが
   実現するかなぁ、どこかの出版社さん、英断をお願いします。

   ***追記 (04/11/18)

   「スタージョンは健在なり」、創元SF文庫での書名は「時間のかかる彫刻」になるよう
   です。う〜ん、それならやっぱり「ゆるやかな彫刻」にしてくれよ〜〜と個人的願望をブ
   ツブツ、、

   ***追記 (04/11/24)

   「時間のかかる彫刻」は、中編「ここに、そしてイーゼルに」、「箱」など、全十二編を
   収めた作品集。12月12日刊行予定。

   ***追記 (04/12/14)

   創元SF文庫「時間のかかる彫刻」の収録作品は以下のとおり、
    「ここに、そしてイーゼルに」
      ヒューゴー・ネビュラ両賞受賞作
    「時間のかかる彫刻」
    「きみなんだ!」
    「ジョーイの面倒をみて」
    「箱」
    「人の心が見抜けた女」
    「ジョリー、食い違う」
    「〈ない〉のだった――本当だ!」
    「茶色の靴」
    「フレミス伯父さん」
    「統率者ドーンの〈型〉」
    「自殺」


2003年10月31日 08時23分54秒



7. 祝! レム選集刊行

   ポーランドのSF作家、スタニスワフ・レムの選集が 国書刊行会から刊行されます。
   レムの大ファンである私にとってビッグニュース!
   しかも、第1回配本が「ソラリス」。ハヤカワSF文庫での「ソラリスの陽のもとに」と
   いう、無意味に冗長なものではなく、原題そのまんまの「ソラリス」になるもよう。

   ハヤカワSF文庫で版を重ねている「ソラリスの陽のもとに」。誤植がある版、表紙が映
   画のシーンの版、CGの表紙の版等、3冊持っています (^^; (笑)
   あまりにも大好きな作品であるため、ハードカバーで欲しいなぁ、と思っていたんですが、
   ついに実現する運びとなりました。

   国書刊行会は「文学の冒険」シリーズでおしゃれな装丁をしてくれているので、このレム
   ・コレクションも期待がもてます。「文学の冒険」シリーズでは、レムの「虚数」
   「完全な真空」
が刊行されています。

   
   「ソラリス」  
    S. レム/著、沼野充義/訳
     *ポーランド語からの新訳になるそうです(ハヤカワSF文庫版はロシア語からの
     重訳)。
    ISBN4-336-04501-1 四六変形判・上製カバー
    本体予価2400円
    6月下旬刊行予定 (→ 第1回配本・既刊)
    国書刊行会の「ソラリス」紹介ページは こちら

   スタニスワフ・レム コレクション(全6巻)以降続刊

   
    「高い城・文学エッセイ」 芝田文乃他訳 (第2回配本・既刊)
    *「高い城」は自身の少年期を扱った自伝。

   
    「天の声・枯草熱」 深見弾・吉上昭三・沼野充義訳(第3回配本・既刊)
    *2作品とも、サンリオSF文庫で刊行されていました。
     この文庫では「浴槽で発見された手記」も刊行されましたが、「技術大全」や「偶然
     の哲学」が続刊としてアナウンスされたものの、サンリオSF文庫の廃刊と共に幻と消
     えてしまいました。同じくアナウンスされていた「完全な真空」と「虚数」は国書刊
     行会から既刊となっています。「技術大全」と「偶然の哲学」もぜひっ!!

        今は亡きサンリオSF文庫版


   
    「フィアスコ(大失敗)」 久山宏一訳 (第4回配本・既刊)
    *「エデン」「ソラリス」「無敵 (邦題:砂漠の惑星)」に連なる、久々に「未知との
      出会い」を描いた作品。

   
    「短篇ベスト10」(第5回配本・既刊)
    *「ロボット物語」や「泰平ヨン」シリーズからの短編集。

   
    「主の変容病院・挑発」 関口時正・長谷見一雄訳(第6回配本・既刊)
    *「主の変容病院」は非SF作品。
    *「挑発」は、架空の本の書評集「完全な真空」の系列に連なる作品で、架空の歴史書
      の書評。

    ***追記 (03/06/11)

    6月10日付けの国書刊行会のサイト記事によると、「ソラリス」の刊行が9月に延びてし
    まいました。なんちゅ〜こっちゃ。

    また、オラフ・ステープルドンの「最後のそして最初の人類」が刊行予定とのこと。
    「スターメイカー」は刊行されてましたが、SFファンにとって幻の作品となっていた
   「最後の〜」がついにお目見えとなります。

    ***追記 (03/09/14)

    国書刊行会のサイト記事によると、「ソラリス」の刊行がまた延期され、11月予定となっ
    てしまいました。ふんがぁ〜

    レム・コレクションの詳細パンフレットがあるということなので、さっそくメールで送付
    をおねがい。広報からメールが返ってきて 2日後に郵送されてきました。すばやい対応に
   感謝感謝。

    ***追記 (03/10/31)

    国書刊行会のサイト記事によると、「ソラリス」の刊行がまたまた延期され、ついに来年
   春となってます。なんだかなぁ、全国のレムファンの嘆きとあきらめの吐息が聞こえてき
   そうじゃわい。

   ***追記 (04/09/05)

   国書刊行会のサイト記事によると、「ソラリス」の刊行は9月予定とのこと。以前あった
   「猛烈に作業中です」の文章がなくなったので、今回は信憑性が高いかも。
   実に楽しみなことです。

   ***追記 (04/09/27)

   国書刊行会のサイト記事によると、ついにようやくやっとこさ「ソラリス」刊行開始です。
   しかもハヤカワ文庫版は原書の約1割をカットしているそうで、ポーランド語からの新訳
   である今回の「ソラリス」はまさに日本語版の決定版といえるとのこと。
   うぅ、なんとうれしいことか、、、

   ***追記 (04/10/29)

   国書刊行会のサイトから「ソラリス」を発注。送料・代引き手数料なし、というありがた
   いシステムなので直接注文にしてみました。

   ***追記 (04/11/01)

   夕方、「ソラリス」が届きました。さ〜て、新訳決定版をじっくり味わいますです。


   ***追記 (15/08/08)

   2015/5月 ハヤカワSF文庫の「ソラリスの陽のもとに」の新装改訂版が出ました。よう
   やく邦題が「ソラリス」になり、めでたい限り。テキストはポーランド語からの訳である
   国書刊行会版を元に、さらに手を加えているそうです。

   
   ハヤカワSF文庫版 「ソラリス」


   Jump to 2. ソラリス


2003年06月03日 23時10分58秒


   
6. OUT その2

    *** 映画の内容にモロにふれています。未見のかたは読まないほうがいいでしょう。

   OUT
   監督 平山秀幸
   原作 桐野夏生
   製作 古澤利夫ほか
   脚本 鄭義信
   出演 原田美枝子 倍賞美津子 室井滋 西田尚美 香川照之 間寛平 大森南朋
   FOX映画(2002)

   以前、小説とTVドラマについて書きましたが、ようやく映画をDVDで見ました。

   映画化作品としては、はっきり言ってガッカリ。よくまぁここまで、あんなに面白い原作
   を骨抜きにできるなぁ、という印象。換骨奪胎とは、まさにこのこと。
   古典落語「目黒のサンマ」に登場する、安全第一で味もそっけもないサンマを食べさせら
   れる殿様の気分 (^^; (笑)

   キャストは実にいいんですよ。悪役の間寛平も意外に好演してました。でも、でも、脚本
   がダメ!

   登場人物を削ったぶん、各人物の生活感が薄れてます。
   主人公・雅子と十文字が昔、知り合いだった、という要素が削られ、雅子が有能な銀行OL
   だった、という厚みがなくなりました。
   師匠の娘がいないため、介護に明け暮れるなかでの生活感がうすっぺらになりました。
   そして一番の見どころである、雅子と佐竹の対決がなくなり実にガッカリ〜〜

   小説と、その映画化作品は別物だとは言いますが、ここまで違うとなんともはや、、、
   いまさらながら、TVドラマのほうがデキが良かったぁ、としみじみ感じる次第であります。

   ところで、西田尚美主演の「ひみつの花園」いいですよ〜〜。笑えます。

   


2003年05月28日 23時57分43秒


     
5. イエスのビデオ

    Das Jesus Video
   アンドレアス・エシュバッハ著
   ハヤカワ文庫NV 上下巻

   久々に掘り出し物! 雑誌の書評を立ち読みしてたら、おや?おもしろそ、という本を発見。
   さっそく文庫本コーナーに行ってみたら、あるある。さっそく買って帰りましたぞよ
   (タイトルは、ちとダサい気がしますが)。

   イスラエルの遺跡発掘で、人骨と副葬品の布袋が出土。袋の中には、ビデオカメラの説明
   書が、、。人骨は確かに 2000年前のもの。しかし現代医学の治療跡があった。では、ビデ
   オカメラはあるのか? あるとしたら何が撮影されているのか? 2000年前のイスラエルで
   撮影するとしたら何を?? 誰を??

   背景は時間テーマのSFながら、ビデオカメラを巡る争奪戦のエンタテイメントになってい
   ます。著者はドイツの作家。この作品が本邦初紹介。

   ドイツのSFだと、ローダンシリーズの大驀進が続いていますが、個人的には関心なし。
   H.W.フランケ(もともとはオーストリアの人)の「思考の網」、M.フリック「パーティナ」
   などを思い出してしまいます(両作ともハヤカワ世界SF全集に収録)。

   このエシュバッハという人、実に楽しめる作品を書いてくれます。現役バリバリで、著作
   はかたっぱしから賞をとっているとか。
   この作品、アメリカでドラマ化されたそうで、、う〜ん見てみたい。


2003年03月30日 07時43分02秒


   
4. OUT その1

    桐野夏生の犯罪小説。名品です。

   TVドラマ(TBS系列)を見たのが最初でした。これがもぅ、キャスティングが見事!
   田中美佐子、渡辺えり子、哀川翔、特に、渡辺・哀川の2人はまさにハマリ役。
   音楽もすばらしくドラマを盛り上げていました。ドラマはめったに見ないんですが、この
   番組だけは毎週が楽しみでした。しかし、最終回はどこか妥協したというか、はしょった
   ような感じがして違和感が残り、やや疑問に感じたものです。

   そこで原作を、となるんですが、単行本だと読むのにめんどくさい厚みなので、文庫化さ
   れるのを数ヶ月待ってみたものの、その気配がない。
      注:現在は文庫になっています(講談社、上下巻)。
   で、新古書店をいくつか回ると、まぁまぁの美本が手に入り、読みだしたら実にいい。
   閉塞感のある日々から逸脱 (OUT)していく過程が説得力のある筆力でずんずん進んで
   行きます。

   原作を読んで、TVドラマ最終回の違和感の理由がわかりました。原作のままでは過激すぎ
   てとうてい映像化できません(映画なら可能かも)。

   桐野作品は「顔に降りかかる雨」を読んだことがあるんですが、これがイマイチだったの
   で「OUT」はよさそうだな、と思ってたものの手をだしていませんでした。

   原作がベストセラーになり、映画化もされました。まだ未見です。キャストの一部にやや
   不安を感じ(間寛平が悪役)、ラストもかなりアレンジしているようです。

   いい小説に出会うと、つい部分的に何度も読み返してしまいます。この作品もその1つです。


2003年03月21日 05時12分09秒


   
3. 砂の女

   安部公房の傑作です。
   世界各国に翻訳され、映画化もされました。

   監督 勅使河原宏
   脚本 安部公房
   音楽 武満徹
   出演 岡田英次、岸田今日子、他
   勅使河原プロ (1964)

   

   不条理劇の一種、広い意味でのファンタジーでしょう。
   狭い空間での人間模様から、徐々に人間社会全体が浮かびあがってきます。
   原作者自身が製作に参加してるだけあって、原作の雰囲気を見事に映像化しています。
   原作も映画化作品も傑作という希有な例でしょう。

   岡田英次が食事しているシーンで演技ではなく本当にむせて、ご飯を吹き出したところ
   カメラマンが NGだろうと勝手にカメラを止めてしまって、「せっかくのいいシーンを!」
   と、ふだんは温厚な勅使河原監督が激怒したそうです。

   昨年、安部公房原作&勅使河原プロ製作の映画の DVDボックスセットがリリースされま
   した。う〜ん、欲しい〜〜


2003年03月20日 00時22分47秒


   
2. ソラリス

    ポーランドのSF作家、スタニスワフ・レムの代表作の1つです。
   (この題名、たぶん、ポラリス(北極星)のもじりではないかと推察)
    ↑と、長年、思っていたのですが、ラテン語で「太陽」とのこと。
     いやはや、知らない、ということはコワいですねぇ。

   ハヤカワSF文庫で版を重ねていますが、タイトルが「ソラリスの陽のもとに」という冗長
   なもの。おいおい、余計なことすんな〜!と抗議したい (^^;(笑)
   レムの「無敵」という作品も、邦題は「砂漠の惑星」(ハヤカワSF文庫)。「無敵」のほう
   が内容にふさわしいので、なんだかねぇ、、、。これも名品です。

   「ソラリス」、1回読んで、どうもピンと来なくて、神奈川大学の学園祭で映画化作品
   「惑星ソラリス」を上映ってんで見に行きました。で、あぁ〜なるほどね〜、と納得。
   それから原作を読み直したら、もう感動の極致で最終章なんぞ、ボロボロ泣いてしまい
   ました。個人的に海外SF小説のオールタイム・ベスト1の作品です。ちなみに2位はA.
   C.クラークの「幼年期の終わり」。

    Солярис (邦題「惑星ソラリス」)
     ロシア語の発音だと「ソリャリス」になるそうです。
    監督 アンドレイ・タルコフスキー
    脚本 フリードリヒ・ガレンシュテイン
       アンドレイ・タルコフスキー
    出演 ドナータス・バニオニス(クリス役)
       ナタリヤ・ボンダルチュク(ハリー)
       ユーリー・ヤルヴェト(スナウト)
       ソス・サルキシャン(ギバリャン)
       アナトリー・ソロニーツィン(サルトリウス)
    製作 モスフィルム
    ソビエト映画 (1972)

   

   実にしっかりとした研究ステーションのセット、生活を感じさせる汚れかたもいい雰囲気
   です。演技力の確かなキャストで手堅い作りになっています。ただ「海」の描写は、ふつ
   うの海面を映像処理しただけのもので、原作を知ってる者からすると、なんだかなぁ〜の
   世界。エンディングも原作とは、かけ離れたもので残念。原作の静かな結びかたが大好き
   なんです。

   ロケットのセットなど実にいい感じで、製作費が当初の予定をオーバーしてしまい、モス
   フィルムの運営に支障をきたしたとか。
   ソ連・ロシアの映画はあんまり見る機会に恵まれませんが、この1作だけ見ても、いい俳
   優がいっぱいいるんだなぁと実感します。

   バッハのコラール前奏曲「イエスよ、わたしは主の名を呼ぶ」 BWV 639 をテーマ曲にし
   てまして、内容の深刻さを反映し非常に印象的です。You Tubeで聞くことができます、
   こちら You Tube / Solaris 1972 Theme でどうぞ。
   研究ステーションの図書室には、風景画の傑作として名高いピーテル・ブリューゲル(父)
   の「 雪中の狩人」が飾られており、この絵が大好きな私としては、こういうセンスがとて
   もうれしい。
   
   LD,DVDでリリースされていますが、どれもこれも日本語吹き替え版がありません。ロシア
   語なんぞさっぱりなので、字幕のみが頼りの現状は悲しいものがあります。字幕の情報量
   は音声のそれにとうてい及びませんから今後の対応に期待したいものです(望み薄ですが)。

   ジョージ・クルーニー主演でアメリカでリメイクされました。「スターログ」誌での監督
   インタビューの感じでは期待がもてそうです。でも、役名を変えてるようで、主人公の妻
   (原作では恋人)の名前がハリーではなく、ありゃりゃ〜。
   アメリカでの興行成績はイマイチだったようで、原作者レムからは、恋愛面に重点を置き
   すぎている、というコメントが寄せられたそうです。

   ***追記 (21/01/31)
   Wikipedia の「惑星ソラリス」の項 によると、なんと日本語吹き替えバージョンが存在
   するそうです。東京12チャンネルがTV放送用に制作したもの (1979) ですが、2時間の放送
   枠に収めるために、165分の作品を94分にバッサリとカットしたもので、地球でのシーン
   があらかたなくて、首都高のシーンもないそうです。
   VHSでソフト化されていて、そのレンタルビデオの時代に見ることができたようですが
   知りませんでした。残念無念、、、今でも中古市場に出ているようです。
 
      TOHO VIDEO「惑星ソラリス」(VHS)
 


   Jump to 7. 祝! レム選集刊行


2003年03月19日 23時06分26秒


  
1. 名前の由来

   星新一さんという作家を知ってますか?
   ショートショートとよばれる短編小説の名手で、日本SF界の中心人物でもあった人です。
   '97年、残念ながらお亡くなりになりました。

   中学の3年間、私の読書は星さん一色でした。その当時でていた文庫本は全部集め
   (32冊)、その他の判型の本もいくつか集めました。

   短編集に「なりそこない王子」というのがありまして、これに収録されているのが「ミド
   ンさん」という作品。

      ある日、主人公が街中で「ミドンさんですか?」と声をかけられ、その後、
      何人もの人から同じように声をかけられ、だんだんエスカレートしてきます。
      そして、主人公も、、、

   というもので、どういうわけか「ミドン」という音の響きが忘れられず、ネットでのニッ
   クネームに愛用しています。

   「妄想銀行」という短編集がありまして、その中に「鍵」という作品があります。私の星
   作品ベスト1が、この作品。ファンからの支持も厚いようで、星さんの有名なファンサイト
   であった「星新一のにぎやかな部屋」の人気投票でも常に上位にランクされていました。

   星さんという人は、作家仲間とのつきあいの中で「星語録」と称される爆笑ものの発言が
   いろいろあり、一種の伝説になっています。その1つをご紹介、

     SF作家仲間で茨城県東海村の原子力研究所に見学に行ったときのこと。
     出迎えに来た所員に星さんが開口1番、
     「ハラコツトムさんをお願いします」。
     「はっ?」といぶかる所員。
     原子力(はらこつとむ)研究所に来たから、ということだとか。
     そして「おみやげに原子とやらを、ひとかけら下さい」と言って
     作家仲間のほうを向くと
     「原子ってのはね、茨城のお百姓さんが畑で育ててるんだ」とニコニコ。
     それからは、作家仲間だけで勝手にワイワイと盛り上がってしまったとか。

   昔、NHK教育で歴史ものの番組を見てたら、突然、ゲストに星さんが登場してビックリし
   たことがあります。童顔に高身長は知ってましたが、その声が意外にガラガラ声でさらに
   ビックリしたものです。

   *「なりそこない王子」は、講談社文庫、新潮社文庫。
     「妄想銀行」は、新潮社文庫で手に入ります。


2003年03月18日 00時19分53秒



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